『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』に続き、89回目は、
『過去のない男』
Meis Vailla Menneisyytta
監督:アキ・カウリスマキ
出演:マルック・ベルトラ、カティ・オウティネン
アンニッキ・タハティ
****あらすじ****
夜のヘルシンキに流れ着いた、ひとりの男(マルッキィ・ペルトラ)。
公園のベンチで夜明けを待っていると突然暴漢に襲われ、身ぐるみ
剥がされたうえに、瀕死の重傷を負う。血まみれになりながらも
何とか駅前に辿り着き、気を失ってしまう。
病院で一旦心停止したものの、男は奇跡的に意識を取り戻した。
男は、いつのまにか港の近くの岸部に倒れていた。港湾近くの
コンテナで暮らす一家に助けられたが、男は身分証もなく、自分の
名前すらも分からない。過去の記憶を全て失っていた男は彼らと
共に、穏やかな生活を送り始める。
救世軍からスープが振る舞われる金曜日。男はコンテナの主人に
連れられ、支給場所へとやって来る。スープを取り分ける救世軍の
女性イルマ(カティ・オウティネン)と運命的な出会いをする男。
まもなく、恋心が芽生え、互いに惹かれていく男とイルマ。
ロック好きなイルマのために、救世軍主催のロック・コンサートを
企画するなど、徐々に行動的になっていく男。コンテナでの暮らしも
徐々に快適になっていく。男のまわりには友人が集まってきた。
ひょんなことから、銀行強盗に関与してしまった男は、新聞記事に
載ってしまう。すると、警察の元に、男の妻(アイノ・セッポ)から
連絡があった。過去が判明した男は、イルマとの別れを惜しみつつ
地元に帰るため列車に乗り込む。
戻ってきた地元の街。男は何の感慨も沸かない。過去は判明しても
記憶は戻らない。しかも、妻とは数か月前に離婚が成立していた。
男は再びヘルシンキに戻り、イルマのもとへと足を運ぶのだった。
************
人生をリセットさせられた無口な男と、変わらぬ日常を過ごす
無口な女のラブスストーリー。台詞は最小限に抑えられている。
交わす言葉は少ないが、二人の感情が手に取るように分かる。
台詞が少ない分、魅せる演技。アキ・カウリスマキ監督らしい
間を読んで楽しむ作品だ。
列車の中で流れる、クレイジーケンバンドの日本語の歌詞が妙に
耳に残る。日本人以外には、ちょうどいいBGMになるのだろう。
実は、この作品には続編がある。
オムニバス短編映画『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』の
『結婚は10分で決める』
次回は、「こ」から