
『ゴーストライター』
The Ghost Writer
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル
オリヴィア・ウィリアムズ、ティモシー・ハットン
公式サイト:
http://ghost-writer.jp****あらすじ****
有能なゴーストライター(ユアン・マクレガー)は英国の元首相
アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を依頼された。
実は、その2週間前にラングの側近で彼の自叙伝を執筆していた
前任者が泥酔してフェリーから転落して溺死したために、新たな
ゴーストライターが必要だった。事故死とも自殺とも言われている。
あまり乗り気がしない。代理人(ティモシー・ハットン)に説得され
面接に行てみると。ラングが滞在しているアメリカ東海岸の孤島に
滞在し、前任者の草稿をもとに1ヶ月以内に原稿を仕上げる条件で
報酬は破格の25万ドル。
仕事を請けることになり、出発はその晩。面接から自宅に戻る途中
強盗に遭い、受取ったばかりの草稿を奪われてしまう。嫌な予感。
きっと、後をつけられていたのだ。やはり、乗り気になれない。
ヒースロー空港でのフライト待ちの間に、ニュース速報が流れた。
ラングが首相時代にイスラム過激派のテロ容疑者を不法に拉致し
CIAに引渡して不当な拷問に加担した疑いがあるという。
大変なことになった。もし事実なら、ラングは戦争犯罪者扱いされ
裁判で裁かれるだろう。そんな人間のゴーストライターになるとは。
急いで代理人に連絡すると、自叙伝が売れるチャンスだという。
そんな。嫌な予感。
ラングが滞在する東海岸の孤島へはフェリーで向かう。前任者が
泥酔して転落したフェリーだった。ラングの海辺の別荘は厳重な
警備が敷かれていた。専属秘書のアメリア(キム・キャトラル)から
自叙伝の草稿は持ち出し禁止で、データコピーも厳禁と聞かされ
守秘契約書にサインを求められた。初めから書き直すということだ。
前任者が書いた草稿を目にしたが。家族の家系から始まる自叙伝は
退屈極まりない。読んでいる途中で眠ってしまった。ラング本人に
インタビューをしながら草稿の手直しが必要だ。
学生時代はプレイボーイで政治に無関心だったラング。なぜ急に
政治の道を目指したのか気になった。選挙の参加を求めて部屋を
訪ねてきたルース(オリヴィア・ウィリアムス)に一目惚れしてから
政治に関心を持ったのだという。後に妻となったルースはラングに
あれこれと助言をし、ラングもルースの助言を聞き入れていた。
気の強いルースはどう見ても、女好きのラングには合わないような。
なぜ2人は結婚したのだろう。
始めのうちは島内のホテルに泊まり、ラングの別荘に通っていたが。
ある晩、ホテルのバーでラングに恨みを持つ英国人と話した直後に
部屋を荒らされた。誰の仕業なのか。あの英国人が怪しい。
ラングに抗議するデモ集団から身を守るために、ホテルを出て
ラングの別荘で過ごすことに。依頼主の家には泊まらないことに
しているのだが。今回は致し方ない。
前任者が使っていた部屋を片付けていると。引き出しからラングの
学生時代の写真が出てきた。そこには劇団に参加していた若き日の
ラング。裏にはポール・エメットという名と電話番号らしき番号が
手書きで書かれていた。電話をしてみると。出たのはライカールト。
ラングの極秘情報を漏らした閣僚だ。気になる。
前任者の事故現場を確かめに行ってみると。近所に長く住む老人は
潮の流れの関係で、絶対に浜辺には死体は上がらないという。
しかも、事故の前夜に浜辺で懐中電灯の灯りを見たトなり人は警察に
事情を話したすぐ後に事故で昏睡状態に陥っているという。怪しい。
何か陰謀らしきものを感じた。前任者が使っていた車に乗り
カーナビの指示通りに車を走らせると。フェリーに乗り、島を出て
着いたのは、ポール・エメット(トム・ウィルキンソン)の邸宅だった。
ラングとは面識がないというエメットだが。部屋には、ラングと一緒に
撮った写真が飾られている。
帰ろうとすると、車が尾行してくる。ギリギリのタイミングで島への
フェリーに乗ると、追ってきた車もごり押しでフェリーに乗ってきた。
車をフェリーに置いたまま、慌ててフェリーから降り、危機一髪。
身の危険を感じた。フェリー乗り場近くのホテルにチェックインし
すぐにエメットのことを調べると。彼はCIAの国際人材担当だった。
ラインカールトに電話をした。迎えが来るまで待つようにと。
迎えの車に乗り込むと。ラインカールトがいた。実は、前任者は
ラインカールトの指示で、ラングの過去を探っていたのだった。
ラングと激しい口論をした直後に、真相は自叙伝の冒頭部分に
書いたとラインカールトに言い残し、翌日事故死した前任者。
冒頭部分は、ラング家のことと大学時代のこと。ラングの秘密など
書かれていなかった。まさか。ラングは大学時代にエメットからの
誘いで政治の道に入るべく労働党員になり、CIAの後ろ盾で首相に
なれたのか。
前任者と同じく、車だけをフェリーに残したゴーストライターを
心配したラング。ワシントンから帰る途中の自家用機で迎えに行くと
秘書アメリアから連絡があった。真相を知ってしまったので怖い。
同乗したくないが。断るのも怪しがられて、危険だ。
機内で真相究明をされたラングは激しく怒り出した。孤島に到着し
自家用機から降りる時に、銃殺されてしまった。犯人はイラク戦争で
息子を亡くしたというデモの中にいた英国人。ホテルのバーにいた
あの英国人だ。殺したのは彼だが。タイミングが良過ぎるような。
裏には、もっと大きな何かが存在しているはずだ。
ラングの自叙伝発売のパーティーにゴーストライターも招待された。
普通なら、ありえないことなのだが。アメリアの計らいだった。
「自叙伝の冒頭に何か秘密があるらしいの」というアメリア。
まさか。もう一度、前任者の草稿を読み返してみると。
最初の数ページの冒頭の文字を繋ぎ合わせると、大変な事実が
暴かれていた。
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大好きなユアン・マクレガー主演の作品。打ち切り間際に見られて
よかった。ヒッチコックのサイコサスペンスを見ているような感じ。
衝撃的なシーンはほとんどないのだが、不安を掻き立てるような
BGMも相まって、どんどんと不安と疑心が増してくる。
ゴーストライターは名前がなく、パートナーも子供もなく、特に
政治にも興味はなく、始めのうちは前任者の死亡原因にもあまり
興味はなかったのだが。徐々に真相を掴もうと、のめり込んでいく。
見ている方も、次第にゴーストライターに感情移入していく。
心理的に怖い映画だったが。ちょっとしたところや台詞にシニカルな
ユーモアもあった。特に、知的なルースとの会話が面白い。
英国の諜報員007を演じていたピアース・ブロスナンがCIAとは
トニー・ブレアのそっくりさんを当てるよりも配役が粋だ。
ゴーストライターがロンドンからニューヨークへ向かう便は
Virgin Atlanticだった。確か、離陸前に機内で流れる案内の
アニメショーンVTRではユアン・マクレガーが若い客室乗務員の
声を担当していた。
最後の数分で、その先が分かってしまう瞬間があった。見ていた
誰もがきっと、「あっ!」と思った瞬間。絶妙な撮り方だ。上手い。
よく見てよく読んでいれば、前半で答えが分かっていたはず。
分かった後でも、もう一度、最初から見てみたくなる映画だった。