『ビッグ・フィッシュ』に続き、88回目は、
『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』
A Soldier's Daughter Never Cries
監督:ジェームズ・アイボリー
出演:クリス・クリストファーソン、バーバラ・ハーシー
リリー・ソビエスキー、ジェーン・バーキン
****あらすじ****
1960年代のパリ。
アメリカ人の少女シャンヌ・ウィリス(リリー・ゾビエスキー)は
元軍人で著名な小説家の父ビル(クリス・クリフトファーソン)と
明るい母マルチェラ(バーバラ・ハーシー)と共に、幸せで楽しい
日々を送っていた。
ある日、両親が6歳になるフランス人の少年ブノワ(サミュエル・
グリュアン)を養子として迎え入れた。今まで、両親の愛情を受けて
育った一人娘のシャンヌ。新しくできた弟に警戒感を抱く。
15歳の時にブノワを産んだ未婚のフランス人の実母は、書類上の
養子縁組手続きを取るのを拒んだ。
小さな頃から、里親をたらい回しにされていたブノワ。いつでも
孤児院に帰れるように、スーツケースに荷物を纏め、手放さない。
やがて、ブノワは家族の皆と打ち解けるようになった。ブノワは
ビリーと改名し、ウィリス一家に馴染んでいく。
ビルはビリーの母親と連絡を取り、正式に養子縁組の契約を結んだ。
ビリーの母親はビリーに姿を見せず、彼を産んだ際の日記をビルに
渡した。「いつか、息子が望んだら、日記を渡すように」と託す。
そこには、母親の愛情が溢れていた。
思春期のシャンヌは、オペラ好きの風変わりな少年フランシス
(アンソニー・ロス・コスタンツォ)と仲良くなる。
彼と二人暮らしの母親(ジェーン・バーキン)も、とても個性的。
フランシスがシャンヌに対する恋心が芽生え始め、2人の関係は
ギクシャクし始めた。
そんなある日。ビルは家族とアメリカへ帰国することに決めた。
子供達がフランスの価値観に染まりきらない10代のうちに祖国
アメリカに渡った方がいいと考えたのだ。
ビルの持病の心臓病が悪化し、アメリカ人医師の治療を受けたいと
いうのも帰国する原因のひとつでもあった。
アメリカ行きを告げたシャンヌ。フランシスに好きだったと告白され
驚く。シャンヌは、フランシスを親友だと思っていたのに。
シャンヌは思春期を過ごしたパリを離れ、アメリカへ。
1970年代のアメリカ。
入り江を一望するロングアイランドの高台に引越したウィリス一家。
アメリカに移っても、パリでの生活習慣を変えることはできない。
シャンヌとビリー(ジェシー・ブラッドフォード)は地元の高校に
通い始める。フランス育ちの2人は、仲間に受け入れてもらえない。
学校に馴染めない。パリの暮らしが懐かしい。
精神不安定になったシャンヌ。相手に受け入れられようと思う
一心で、次から次へと男子生徒と肉体関係を持っていく。
不安な気持ちを父に正直に相談したシャンヌ。どんな時でも、父が
見守ってくれているという安堵感を実感した。
ビルが入院することになった。病床でも執筆活動を続けるビルは
シャンヌに口述書記をさせる。日々病状が悪化する父を目の前に
思わず涙するシャンヌ。ビルは「将軍の娘は泣かない」と言い
シャンヌを気遣う。それは父娘の合言葉にもなっている言葉だった。
ビルが退院したある日。ビルはビリーの生い立ちをシャンヌに話し
母親から預かっている日記を読んで、ビリーに話してほしいと頼む。
アメフトの選手キースに交際を申し込まれたシャンヌ。まず、父に
相談し、交際の許可をもらう。ビルは誠実そうなキースとの交際を
温かく見守っていた。
大晦日の夜。ビルは一家で新年を迎えたいと思っていた。ビルには
きっと最後の年越しになるだろうと覚悟をしていた。
キースとカウントダウンパーティ出かけようとしていたシャンヌ。
ビルは自分から巣立っていくシャンヌの意思を尊重した。
新年を向かえた。シャンヌは不安になる。父ビルに電話をした。
「パパ、一緒にいたい。新年、おめでとう。明日も会えるわよね」
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思春期を過ごした、1960年代のパリ。
大人になっていく過渡期を過ごした、1970年代のアメリカ。
2つの国の2つの文化の中で成長していく娘と、娘を見守る父の
物語。信頼が置ける父娘の関係が、とてもいい。
主演のリリー・ゾビエスキーが美しく成長していく様子を誰の
目線でみるかによって、この作品の見方が変わってくるだろう。
次回は、「か」から