
『ぼくの大切なともだち』
Mon Meiller Ami
監督:パトリス・ルコント
出演:ダニエル・オートゥイユ、ダニー・ブーン、ジュリー・ガイエ
公式サイト:
http://www.wisepolicy.com/mon_meilleur_ami****あらすじ****
美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は、オークションで
紀元前5世紀の古代ギリシャの壷に魅了されてしまう。亡き友人を
想い、涙を溜めるために作られたという壷。フランソワの専門は
ギリシャ美術ではないのだが。手に入れたくて仕方がない。
当日は、お目当ての美術品を競り落とす予定だったにも関わらず。
共同経営者のカトリーヌ(ジュリー・ガイエ)の反対を押し切り
テレビ局のプロデューサーと競り合った末、20万ユーロで壷を落札。
プロデューサーに言い値で買いたいと持ちかけられても、頑として
断るフランソワ。壷はフランソワの自宅に送ってもらうことにした。
ただ、関税手続きで配送が遅れるとのこと。
オークションの前に、顧客の葬式に参列したフランソワ。その日の
夜に開かれた自分の誕生日パーティーに、遅れて駆けつけた。
親族を含めた参列者がわずか7名の寂しい葬儀だったと話すと。
パーティーの出席者が口を揃えて、フランソワの葬式には誰も
来ないと言うのだ。なぜなら、フランソワには友達がいないから。
誕生パーティーに出席したのは、仕事上の付き合いがあるからで
フランソワを友達だとは思っていないと言われる始末。ショックを
受けるフランソワ。
皆から親友がいないと断言され、反発するフランソワ。ついつい
カトリーヌの挑発に乗り、10日以内に親友を連れてくるという賭けに
応じてしまう。もし出来なければ、20万ユーロで落札したばかりの
古代ギリシャの壷を手放す事態に。でも、後には引けない。
早速、自分が親友だと思う人達のリストを作り、彼らを訪ねて回る
フランソワ。しかし。自己中心的な性格が災いして、結局誰からも
相手にされない。友達だと思っていたのは、自分だけだった。
仕事仲間としか思われず、幼少時代の同級生からは、「嫌いだった」
衝撃の事実を突きつけられる。途方に暮れるフランソワ。
離婚した妻が引き取り、大学進学のためにパリにやって来た娘にも
パパは相変わらず思いやりがなく、人と接するのが下手だと言われ
大ショック。自分が感じ悪いなどとは、今まで思ってもみなかった。
このままでは、古代ギリシャの壷がカトリーヌの手に渡ってしまう。
ふとしたきっかけで出会ったタクシー運転手のブリュノ(ダニー・
ブーン)。物知りなブリュノは、うんちく好き。けれど、誰とでも
気軽に話しができる。どうすれば友達が作れるのか、ブリュノに
教えを請うフランソワ。人と接する時に大切なのは、3つのこと。
感じ良く、いつも笑顔で、誠実に。
ブリュノと一緒にタクシーに乗り、感じのいい会話の手本を見習う
ことに。果たして、わずか10日間でフランソワは親友を作ることが
できるのだろうか。
ブリュノは子供の頃からクイズ番組に出演するのが夢だった。
新聞や雑誌を切り抜いて問題作りをし、細部に亘って記憶している
のだが。実は、極度の上がり症。面接ではいつも緊張してしまい
まともに答えることができない。生放送のテレビ番組向けではない
と判断され、いつも落とされる。
フランソワとカトリーヌの店は資金繰りに難航していた。銀行から
これ以上の融資はできないと言われ、窮地に陥る。フランソワは
自分の持ち株を処分して補填し、今後の経営はカトリーヌに任せる
ことで難を逃れた。
ブリュノとサッカー観戦をした帰りに、夕食に誘うと。断られた。
週末はいつも実家で夕食をするのだ。フランソワも一緒にどうかと
誘われた。浮き足立つフランソワ。両親との夕食に誘われたという
ことは。ブリュノこそ、フランソワの友達だ。そう、親友だ。
ブリュノを出迎えた両親に、「ぼくの友達」と言ってフランソワを
紹介してくれた。おお、嬉しい。つい、笑顔になるフランソワ。
カトリーヌに親友ができたと連絡したフランソワ。親友の定義とは
自らの命の危険を顧みずに助けることができる人だと言われ、その
証拠を見せて欲しいと言われてしまう。
ブリュノに、店の資金繰りに困っているので古代ギリシャの壷を
盗んで欲しいと頼んだフランソワ。フランソワのために、強盗に
入ることを承諾したブリュノは決しの思いで犯行に及ぶが。
ブリュノが本当にフランソワの親友かどうか試すための芝居だった。
フランソワを信用していたのに。傷ついたブリュノ。犯行のために
用意したハンマーで、古代ギリシャの壷を割ってしまった。
壷を割られて大ショックのフランソワ。実は、本物ではなかった。
カトリーヌが銀行の差し押さえを逃れるために作らせたレプリカ
だったのだ。そんなことは知るよしもないブリュノ。フランソワが
誤ろうとしても、避けられてしまう。
酷いことをしたと後悔するフランソワ。ブリュノへの償いのため
壷を手放すことにした。買値でテレビ局のプロデューサーに壷を
譲る代わりに、ブリュノをクイズ番組に出演させて欲しいと頼む。
「クイズ ミリオネア」の生放送に出演することになったブリュノ。
緊張でパニック状態に陥るものの、トントン拍子で最終問題に進む。
最後の1問を正解すれば、100万ユーロが手に入る。まだ、誰の
助けも借りていない。ライフラインを3つ残したまま。
最終問題は、美術の問題。答えに迷い、50/50やオーディエンスを
使うが。答えは似通っていた。司会者に、テレフォンを使うかと
訊かれたのだが。電話する友達がいない。あ、でも、ひとりいる。
しかも、美術に通じた人。フランソワ。彼なら答えを知っている。
ただ。仲違いしたままなので、電話をしにくい。どうしよう。
自宅でテレビを見ていたフランソワに、ブリュノからの電話が・・・。
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サン=テクジュペリの「星の王子様」の一説が主題となった作品。
「君にとって、僕は沢山いるキツネの1匹。
でも、互いになじめば、大切な存在となる。
僕は君の、たった1人の人。僕は君の、たった1匹のキツネ」
友達はいいものだと実感すると同時に、真の友情とは何なのかと
真剣に考えさせられる。哲学好きなフランス人ならではの発想だ。
コメディ風のバディ映画。ハリウッド映画とは、ひねりが違う。
友情の捉え方は、人それぞれ。
近所に住んでいる友達、付き合いの長い友達、同じ趣味を持つ友達
美味しいものを食べに行く友達、旅行友達、愚痴を言い合える友達
共にライバルとして意識しあえる友達。
友達と親友の違いは何なのだろう。考えたことなど、なかった。
クイズ番組の場面では、自分も視聴者になったような気分で見た。
全問正解で100万ユーロとは、かなりの額だ。今の為替レートなら
日本のクイズ$ミリオネアに比べると、16〜17倍。すごい。
ダニエル・オートゥイユはかなり恰幅がよくなったのには驚いた。
ジェラール・ドパルデューが小さくなったのかと思ったほど。
ブリュノ役のダニー・ブーンは、表情の移り変わりが顕著。
ラストの場面での、余裕ある表情がいい。
日中は暑さのあまり、出かけにくくなった。気になっていた映画は
ほぼ全部見た。名古屋での映画鑑賞は、おそらく、この作品が最後。
締めに見る作品としては、とてもいい作品だったので満足だ。
次に映画館に足を運ぶのは、いつになるだろう・・・。