『素晴らしき哉!人生』に続き、79回目は、
『イン・ザ・スープ』
In The Soup
監督:アレクサンダー・ロックウェル
出演:スティーヴ・ブシェミ、シーモア・カッセル、ウィル・パットン
ジェニファー・ビールス
****あらすじ***
NYの安アパートに住むアドルフォ(スティーヴ・ブシェミ)は
映画作りを夢見る青年。隣に住むアンジェリカ(ジェニファー・
ビールス)に秘かに恋心を抱いている。いつか、アンジェリカを
主役に映画を撮ることができたら・・・。
実情は映画製作の資金どころか、日々の暮らしに困るほど。
内気なアドルフォは、アンジェリカに想いを伝えることもできない。
生活のため、インチキプロデューサー(ジム・ジャームッシュ)の
仕事を引き受けたアドルフォ。しかし、金にはならない。
いよいよ生活に困り、大切にしていた500ページにも及ぶ自作の
脚本を売りに出すことにした。
すると。ジョー(シーモア・カッセル)と名乗る男が現れた。
アドルフォの脚本が気に入ったので、1000ドルで買うという。
おまけに映画製作の資金援助を申し出てくれた。どこから見ても
怪しい見掛けの、初老のジョー。胡散臭い。けれど、憎めない。
ジョーがアドルフォに紹介したのは、彼の弟のスキッピー(ウィル・
パットンと、ダーン(パット・モーヤ)。ジョーに負けず劣らず
いや、ジョー以上に怪しい雰囲気の輩だ。
やはり。ジョーの資金調達は、犯罪行為以外の何物でもなかった。
ああ。けれど。アドルフォにとっては、ジョーは大事なパトロンだ。
アドルフォも資金調達を口実に、犯罪の片棒を担がされることに。
アドルフォが思いを寄せるアンジェリカの家庭事情は複雑だった。
いつも違う男が部屋を行き来し、怪しげな物音が聞こえる。
ある晩、アンジェリカの部屋で騒動が起こったことがきっかけで
アドルフォは、アンジェリカと親しくなれた。
アドルフォの想いを察したジョー。アンジェリカを誘い、大晦日を
一緒に過ごすことになった。楽しい夜となったのだが。悪乗りした
ジョーが、アンジェリカにキスをした。怒ったアンジェリカは
帰ってしまった。アドルフォはジョーを渋々許すが。内心では
ジョーに対する不信感が募るばかり。
ある日のこと。映画製作の資金繰りのために、麻薬取引の使いに
走らされたアドルフォ。途中で、やっと気が付いた。資金繰りは
ただの口実で、本当は利用されていただけではないか。片棒を
担がされたと初めて気が付いたアドルフォ。ジョーと言い争いに。
その場に居合わせたアンジェリカ。あきれて、思わず銃を撃った。
すると。弾丸は・・・。
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In the soup とは、ドツボに嵌るという意味。
スティーヴ・ブシェミ主演ということだけで、あまり期待をせずに
見に行ったが。よかった。
何というか。「えっ?」という終わり方。そんな・・・と思うのだが。
モノクロ作品なので、もの悲しさやユーモアがより引き立つ。
なぜか、見終わってから時間が経てば経つほど、印象が強まる。
この作品は、アレクサンダー・ロックウェル監督の実話に基づく
話なのだとか。金に困り、サックスを売ったことがきっかけで
小物のギャングに気に入られ、一作目の映画製作資金を援助して
もらい、世に出ることができたのだという。事実は小説より奇なり。
貧乏で情けなくて内気なショボイ男なら、スティーヴ・ブシェミに
勝る者はいない。アドルフォ役は、ぴたりと嵌った。
胡散臭いジョー役のシーモア・カッセルも、アクの強さとお茶目な
感じがよかった。
『フラッシュ・ダンス』以降、久しぶりに見たジェニファー・
ビールス。笑顔は変わらないが、素敵な大人の女性になっていた。
時々、また見たくなる作品だ。
次回は、「ぷ」または、「ふ」から。